PR

<脱サラをする前に> *リンクフリー 全頁無断転載禁止 

ラーメン店を手っ取り早く開業する講座

第2章

◇◇◇ 焦りは禁物です ◇◇◇

<元手資金>

 一般の人はラーメン店を開業するのに「1,000万円は手持ち資金が必要だ」と考えている人が多いのではないで しょうか。しかし、実際はそうでもありません。もし1,000万円なければ開業できない、とすると「手っ取り早く」を主 旨としている本講座の意義がなくなります。
 しかしそうは言いましても、まとまったお金が全く必要ないかというとそうもいきません。やはり「自分で貯めたお 金」が300万円は必要です。300万円という数字は意味があります。仮にも独立を考える人は「コツコツ貯金をす る」という強い意志がなければ独立も長続きしません。その目安となるのが300万円です。もしコツコツ300万円を 貯めていないなら、もしくは「貯められない」なら独立するべきではありません。
 また、親や友人などから100万円を「借りることができるか」も大きな目安になります。この100万円という数字も 意味があります。あなたが社会の中で自分以外の人から「信頼を得られているかどうか」の目安です。
 では、このようにして集めた400万円を元手に開業に挑戦していきます。


 大まかに言いますと、資金の使途として<物件取得費>と<内装工事費>と<その他備品>が上げられま す。これらのうち最初に<物件取得費>に資金を使うわけですがここで使ってよい金額は250万円までです。こ の金額に抑えるためには<居抜き>の物件を探すことになります。そして、この金額に見合った物件を見つける には、こまめに不動産屋さんを歩き、また店舗専門雑誌などを毎回チェックすることです。コツコツ見つかるまで 探します(簡単に言い過ぎ!?)。
 次に、備品関係に50万円まで費やします。備品などは、もちろん前の店子が残していったものを使うようにして できるだけ出費を抑えるようにします。最後に残った100万円のうち50万円までを内装費の頭金とします。残り の50万円は雑費もしくは急な出費のために手元に置いておきます。
 ここまで資金の使い道として大きな振り分けを書いてきました。ここで重要なことは順番です。(1)物件取得費  (2)その他備品代 (3)内装工事費 の順番です。少ない資金で独立を目指すのですから、当然足りない分はロ ーン、クレジットなど要するに借金をしなければなりません。世の中厳しいもので簡単には金融機関はお金を貸し てくれません。このとき最も借り入れ可能なのが内装工事費なのです。

 話はそれますが、私の場合はFCに加盟したため加盟金(研修費など)として100万円を本部に払い、残りを工事 費などに費やしました。ところが加盟金100万円は私にとって何の意味もありませんでした。「体験記」にも書き ましたが、たったの15時間程度の研修時間でしたので練習したことにもなりません。加盟金として100万円使う ならオープン前に自分で1~2日程度練習した方が身に付きますし他の費用に回した方が効率的でした。私の手 持ち資金は500万円でしたが実質的には400万円で開業したことになります。そして開業に際する総費用は900 万円を要しました。私の借りた店舗は、以前はお弁当店であったため内装は全て新しく作り直す必要があったの です。残りはどうしたかというと信販会社です。

 一般の「独立に関する本」では国民金融金庫などを紹介していますが現実的ではありません。連帯保証人にな って貰えるある程度社会的地位が高い人(例えば有名企業に勤務している人や資産を持っている人)がいなくて は無理でしょう。そういう恵まれた人に対する本はたくさん出版されていますのでここでは触れません。

 では、国民金融公庫から融資を受けられない人はどうするかと言いますと、それは先程も書きましたように信販 会社から融資を受けることになります。私の場合は大手N信販会社でした。これは何も難しいことはありません。 内装工事を引き受けてくれる工務店が紹介してくれます。但し、覚悟していただきたいのは国民金融公庫よりか なり金利が高いということです。しかし、身上的に恵まれていないごく普通の人が開業を断行するならこの方法を 選択せざるを得ないでしょう。
 このとき、くれぐれも注意していただきたいのは間違っても高利消費者金融会社には行かないことです。ご存じ とは思いますが、金利が高いだけでなく返済時に怖いトラブルが起きる可能性が高いのです。数年前、取り立て が悪質すぎるとニュースになった高利の金融会社がありました。そのような会社だけは避けたいものです。こうい った金融会社は返済リスクが高くても「出来るだけ貸し付けよう」とし、また元本を返して貰うより利息だけを受け 取っている方を喜ぶものです。そのような会社よりは工務店が紹介してくれる信販会社の方がずっと安心です。
 信販会社を利用するときは保証会社に仲介料を支払わなくてはならない場合があります。私の場合はこの保 証料が融資額の約1割でした。「もったいない」とは思いましたが、すでに工事も完了した後に契約したので仕方 がないというか、融資を受けることができるだけで嬉しかったのです。それはともかく、それほど信販会社を利用 することは容易です。

 銀行や信金について触れておきます。これらも基本的には国民金融公庫と同じです。公庫に比べるなら、まだ 銀行や信金の方が優しさがあります。例えば連帯保証人となる条件の人がいなくてもある年月積立を行っている とその実績を評価して融資してくれることもあります。
 それにしても、国民金融公庫は新しく開業しようとしている人には全く役に立たないところと言っても過言ではあ りません。公庫の融資に対する基本的な考え方は「融資を受けなくても開業できること」が前提となっています。こ れでは融資を受ける意味がありません。普通に考えて「融資を受けなくとも開業できる」人がどれだけいるでしょ う。しかしそれが現実なのです。

 最近では<金融の自由化>により新規開業者のために無担保・保証人無で融資に応じる銀行もあるようで す。
 例えば、ある地銀などはインターネットで申込を行い審査をする制度もあります。しかしながら審査は厳しく申込 数の約30%しか審査を通らないようです。厳しいとはいえこのような制度は<金融の自由化>以前では考えら れませんでした。やはり<自由化>は消費者にはメリットがあります。
 それはともかく、現状では銀行や信金からの融資は本講座の主旨である「手っ取り早く」には適しているとはい えません。しかしなんといっても、最も理想的なのは金融機関から借り入れるのではなく、親や友人などからの借 り入れで全額をまかなえることであるのは間違いありません(当然ですね)。

 最後に、借入れ金は三年以内に返済終了することを目標にして下さい。最初にどんなに売り上げが良くても永 久に続くことはあり得ません。最初の三年は生活費を切りつめてでもとにかく返済に回すのです。そうすることに よって四年目以降が楽になります。人によっては利益を次の投資に回すと考える人もいるでしょう。企業の存続と いう面から考えると一理あるように思えます。しかし夫婦二人で「手っ取り早く」開業という域を越えています。
 もし利益を投資に回して拡大を目指すのであれば、「手っ取り早く」ではなくもっとじっくりと念入りに事業計画を 立てる必要があります。そうなると当然資金もしくは借り入れ額がもっと多大とならなければなりません。それだけ リスクが増大するわけですからもし失敗したなら立ち直りが出来ない可能性も高いのです。

♪♪♪コラムそうなんです♪♪♪

<保育園の確保>
 お子さんがまだ小さいならば開業に際してのネックは保育園です。私には3才と4才の子供がいましたが運良く 申し込んですぐ入園することができました。しかも二人とも同じ保育園でした。
 これは本当に「運の良い」ことで他の共働きの方々の話を聞くと皆さん空きがなく諦めたり遠い親類にあずけた りしたようです。小さい子供がいる場合、脱サラに際して一番のネックはやはり「子供の世話を誰に頼むか」という 問題があります。最悪の場合は、店に子供を一緒に連れて行かなければなりません。
 実は私も開店当初、子供たちを店に連れていきました。私は前もって店内に子供たちを遊ばせておく一坪ほど のスペースまで設けていました。ですが3才と4才の子供にいくら「おとなしくしていて」と言ったところで言うことを 聞くはずがありません。特にお昼のピークタイムには「遊ぶ部屋から出ては駄目。お母さんを呼んでも駄目」と言 いきかせていましたが、子供たちはそんなことはおかまいなく「おかあさ~ん」と顔を出すのです。そのような状態 でしたので仕方なく私の親に子供たちの世話をお願いしました。私の場合は祖父母が子供の世話をみてくれた ので助かったのですが、もし、近親者など子供の世話を頼む人が誰もいないのであれば、厳しいようですが開業 は断念した方がよいです。
 運良く保育園に入園できたとしても保育園は日曜日は必ず休みですし、子供が熱を出したりすると保育園では あずかって貰えません。私たちは子供が熱を出しても体温を偽って保育園にあずけていました。ひどい親でし た。

♪♪♪コラムそうなんです♪♪♪

<店舗の選び方>

 店舗の選び方について述べます。初めに書きましたように基本的に店舗は<居抜き>を探します。<居抜き> とは借りる権利を買うことですから前の店子と大家の関係も大切です。前の店子が廃業する理由が大家さんに 問題があるケースもあります。仮に契約を済ませた後になって大家さんが認めないということになったら契約金を 無駄にする可能性もあります。契約前に大家さんとも連絡を取りましょう。そして近隣の人たちから話を聞くことも 忘れてはなりません。

 さて、立地ですがこれが最も大事です。正直に言いまして100%の確信はありません。飲食業のトップを走るマ クドナルドでさえも出店成功の精度は85%だそうです。運の占める割合が15%はあるのです。それほど立地選 びは難しいのです。しかも資金の少ない中での店舗選びです。だからといってどんな立地条件でもいいということ ではありません。この厳しい条件の中でそれでも外してはいけない要点を書きます。

1 歩いて10分以内に企業など職場があること
2 歩道があること
3 車が停車できるだけの道幅があること
4 周辺に飲食店舗があること
5 近隣住民とのトラブルがないこと
6 人の流れが反対でないこと
7 通勤時間が30分以内であること

 上記のうち最低でも4つはクリアしていなければなりません。欲を言えばキリがありませんが少ない資金の中で は仕方がありません。ですから立地条件の理想を100点とするとするならば60点の物件を探すことになります。物 件を探すのは根気が入りますが、いくら家賃や更新料などが安いといっても30点の物件を選んではいけません。 なぜなら30点の物件はどんなに努力工夫をしても無駄に終わるしかないからです。60点以上が最低条件です。

 上記の要点のうち(6)について補足します。「人の流れ」とは人数ではありません。店の前を通行する人数が多 いに越したことはありませんが、そのような物件は資金的に無理です。ここでいう「人の流れ」とは方向です。人が 移動する方向です。私の店舗は店の前を通る人数は元々少ないものでした。しかし食事時間になると近くの職場 からたくさんのお客様がわざわざ歩いて来て下さいました。ところが私の店と反対方向にある地域がきれいに開 発されると人々はそちらの方に向かって歩くようになってしまいました。詳しくは「体験記」に書かかれています が、これにより「人の流れ」が今までと変わってしまったのです。もちろん売上げに影響があり廃業した理由の一 つです。

 もう一つ、(7)について補足します。上記の項目のうち(1)~(6)は店の売上げに関連する項目ですが、最後の 通勤時間だけは売上げに対するというよりも労働条件に関連する項目です。
 独立しようという人はだいたいにおいて強い意志を持っていますので、多少通勤距離が遠くても「我慢できる」と 考えがちですが、実際に営業を始めてみると大きな障害となります。初めのうちは大して問題ではないでのです が、年月が経つにつれこの通勤時間が貴重になってきます。飲食店を営むと仕事以外の時間がとても少なくなり ますので結局のところ仕事にも影響を与えるのです。このことも忘れないで下さい。

 店舗の探し方についてもう少し詳しく書きます。店舗探しは自分の足でコマメに不動産会社を回ることはすでに 書きました。その際は、貸店舗を得意にしていそうな不動産屋さんに希望の条件を伝えておき、それに適う店舗 が見つかったら連絡をくれるように頼んでおくことが有効です。また店舗を専門に扱っている不動産会社も新聞 や雑誌などに紹介されており、そうした不動産会社に依頼しておくのも有効です。こういった店舗専門会社はマメ に連絡をくれるものです。注意しなければいけないのは、不動産会社も仕事ですから良い物件を紹介するとは限 りません。くれぐれも注意して下さい。紹介された物件を自分の目で確かめたり、リサーチすることに手を抜いて はなりません。

 では、紹介された物件を確認するときの要点について書きます。
 少ない資金ですので、できるだけリフォームはしないで済ませたいものです。まず、店舗の概観を確認します。 その際は、雨漏りがしそうな亀裂の有無などを注意深く調べます。そして店内を確認しますが、厨房を設置する 場所を想定し出入り口を確認します。その際に大切なのは出入り口の数です。
 ラーメン店に限らず、飲食店は出入り口が2つあるのが理想の作りです。1つはお客様専用であり、他方は取 引業者や自分たち専用です。この後者の出入り口は換気時の吸気用にすることもできますし、取引業者が仕入 れ品をお客様の前を持って通ることがないようにするために必要です。些細なことですが、お客様専用以外の出 入り口があることは、実際に店を運営するときに非常に大きな効用を発揮します。

 次に店舗内の汚損状態についてですが、その汚損具合により値段交渉をするのです。特に水回りを念入りに チェックして下さい。厨房内の床のコンクリートとトイレです。例えばトイレの便器などが破損していた場合、取り替 えるのに高い出費を強いられます。またある程度年数の経っている厨房内の床コンクリートはヒビが入っている ことが多く、ホールに水がしみ出てくることもあります。これらのことを念入りにチェックして汚損状態を具体的に 理由を述べると値段交渉を有利に進めることが出来ます。値段交渉は、最後は人と人との触れ合いです。開業 に対する真摯な姿勢を相手に伝え出来るだけ値引きを勝ち取りましょう。
 契約をするかどうか迷った時、不動産屋さんが「早くしないと別の人が持っていく」ようなことを言い、日にちを区 切る時は要注意です。そのように言われても絶対にその時点では返事をしない方が良いでしょう。自宅に帰り冷 静になってから考えて下さい。仮に他の人にその物件を持って行かれてもそれは縁がなかったというだけです。 何にしろ飲食店は立地によって8割方は売上げが決まるのですから…。
 物件を確認した結果、その物件が気に入ったとして次に賃貸条件を確認します。敷金・礼金はいくらか、賃料は いくらか。我々の探している物件は<居抜き>ですが、こういう場合だいたいにおいて前の人の条件をそのまま 継承するようになります。更新期間は何年であと何年残っているのか? また更新時償却は何%か?などを確 認します。
 通常、店舗の契約をする時には一時金が必要ですが一時金を意味する名称として「権利金」「敷金」「保証金」 などがあります。しかし、実際には名称が厳密に区別されていないことが少なくないようです。ですから名称はどう であれ契約に際し支払う一時金が契約終了時に全額返還されるものなのか、または更新時に必要となる金額は いくらなのか具体的に聞いて下さい。「知らないことが恥ずかしい」とウヤムヤにするのは決して得策ではありま せん。分からないことは素直に不動産屋さんに尋ねるのが賢明です。知ったかぶりは最も危険です。素直に尋ね た方が不動産屋さん及び大家さんも好意を持ってくれ、賃料の交渉などにも応じてくれることが多いものです。

∞∞∞   ∞∞∞   ∽∽∽   ∽∽∽   ∽∽∽

 厳しいことを書くようですが、手持ち資金300万円自分で用意できていないのなら貯まるまで我慢することで す。仮に、親などが全額出資してくれるとしても自分自身の力で貯めた300万円はなくてはいけません。なんの 苦労もなく用意できたお金は簡単に流れていきます。それはそのお金に重さがないからです。お金の重さ(価値) それを得るために要した費用に比例している、と何かの本で読みました。

第2章  肝銘(肝に銘じていること)

≪≪資金も店舗も根気よく !≫≫

<脱サラをする前に> *リンクフリー 全頁無断転載禁止 

PR