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脱サラをしてラーメン店を始めたい人に役に立つ講座

第7回

接客はとても気を使います。

<健康>

 前回、妻が交通事故に遭い全治四ヶ月の話をしましたが、事故以外に病気で営業できなくなることもあります。 やはりラーメン業は肉体労働ですから疲れが溜まっているということも影響しているでしょう。病気にならないため に、疲れを溜めないように休養を取ることも仕事だと思わなければいけません。休むことさえも仕事だとすると休 んだ気になれませんが…。しかし、現実問題として病気になったからといって有給休暇を取るわけにもいかない のです。「仕事を休む=無収入」 なのです。妻は、風邪をこじらせて肺炎の一歩手前までいったことがあります。 この時はかかりつけの医院に行ったのですが、「入院した方がよい」 と言われました。しかし、妻が入院などした ら店を長期間休まざるを得なくなります。「入院しないで自宅療養で済ませるよう」 妻から医師に言ってもらいまし た。ここでも私はとても冷たいのです。
 幸い一週間程の静養で治りましたが、もし病気になったらできるだけ早く治るように努力するのが大事です。こ の時の一週間は妻は全く何もしないでただ静かに寝ていられるよう、私が身も心も尽くしたのは当然です。私は 優しいのです。しかし本当の理由は 「妻のため」 というより 「店を早く再開したい」 がためでしたが…。私は冷た いのです。
 健康は本当に大事です。病気とまでいかなくても夫婦どちらかの体調が悪いだけで夫婦仲が悪くなることもあり ます。そうならない為に常に自分の体調に気配りし、細心の注意を払って生活しなければいけません。
 ストレスを溜めないことも大切です。気分転換を計ることを意識し、いつも元気でいられるように留意していまし ょう。しかし、人間ですからたまには落ち込んでしまうこともあります。それでもあきらめずに元気を出すのです。 このように考えると、脱サラというのは結局、生活全部が仕事のためにということになってしまうのです。その覚悟 を決めてから行動に移しましょう。

<顧客とお客>

 私は開業して二年くらいは、ただ闇雲に働いていただけでお客様が見えていませんでした。今思い返してみま すと「店の運営方法」が全て正しかったとは言えません。それでもそれまでの二年間は売り上げが伸びていまし た。この事実は、運営方法が全て正しくないにしても、「正しい運営要因」 の割合が 「過った運営要因」 の割合よ り勝っている場合は売り上げは上がる、ということを示しています。もちろん、このときの 「正しい」 は 「売上げを 上げる」 ことであり、「過った」 は 「売上げを落とす」 ことを意味します。
 その一番の 「正しい運営要因」 とは何といっても「新規開店である」ということです。これに勝るものはありませ ん。どんなに過ったやり方で運営していようと、その 「誤った運営要因」 を 「新規開店」 という要因が打ち消してく れます。
 しかし、いつまでも新規でいられるわけではありません。どんな業種でもそうですが既存店というのは必ず売り 上げが頭打ちになります。その先が本当の運営ノウハウになります。
 ある日、飲食店の経営に関する本を読んでいました。そこには “お客様が何を考えているか、分からなければ 経営とはいえない” と書いてありました。この言葉は私の心に響きました。私は開業当初はそういった種類の本 をほとんど読んだこともなく、ですから 「お客様が何を考えているか」 などという最も大事なことを考えていません でした。それからです。意識してお客様に注意を払うようになったのは…。

 一般の人は 「常連のお客様がつく」 と売り上げは安泰すると考えます。ですから、「いかにして常連客を掴まえ るか」 が繁盛店になれるかどうかの鍵になると考えるでしょう。しかし、実はどんなお店でも 「常連さんはつく」 も のなのです。例えば、「あまりおいしくない」 という評判の店にでもです。常連さんがついたからといって安心して 喜んでばかりはいられないのです。
 お店は常連客以外のお客様の来店も必要です。それどころか、常連客だけではすぐに売上げが頭打ちになる でしょう。例えば、人通りの多い立地的に好条件の飲食店でさえ固定客の比率は三十%にも達していないのが 現実です。ということは 「常連客以外のお客様がどれだけ来るか」 が鍵ということになります。
 そして初来店のお客様は、その店の常連客の雰囲気によって「店の印象」を決めるのです。常連客の醸し出す 雰囲気はとても重要です。一般的な傾向として、常連客は排他的です。自分を一番大切に扱ってほしい、という 強い気持ちを持っています。そうした常連客の中、「一見のお客様が好印象を持つような雰囲気を出してくれる 方」 こそ本当の意味での常連客と言えます。私は、そうした店側の立場を察してくれるお客様を顧客と呼びます。 いかにして顧客を増やすかがとても大事です。いわゆる、customer satisfaction(顧客満足度)これを上げるため に努力しましょう。
ラーメン店は味さえおいしければお客様は来る、と考えている方もいるでしょう。しかし、味の感じ方ほど曖昧で あてにできないものはありません。
 あるビールメーカーが 「味覚のアンケート」 をとったときです。一般の人にビールのテイストをしてもらいました。 同じビールをラベルを貼ったものと全くなんの表示もしない状態で飲んでもらったところ、同じビールであるにも関 わらず 「一方をあっさりしている」 そしてもう一方を 「コクがある」 と正反対の感想を答えたそうです。この結果が 示すように、味覚ほどあてにならないものはありません。
 ラーメンの味も同様で、味覚は人それぞれ感じ方が違いますし、そもそも同じ人間がそのときの体調や雰囲気 で全く異なった感じ方をするものです。ですから、ラーメン店について 「味さえおいしければ繁盛する」 というのは 的外れな考え方です。
 ラーメン店を営業する際に、私が味について一番感動したのは次の言葉です。

 『だれが食べてもおいしい味はないが、だれが食べてもまずい味はある。』

<お客様との接し方>

 「まずいと評判」 の店でも 「常連客はつく」 と先に書きましたが、では何故 「まずい」 のに常連客がつくのでしょ う。
 例えば、当店で常連になってくれた方は当店に来るまではどうしていたのでしょう。考えられるのは「新しく引っ 越してきた」という理由以外に
(A)今まで自分に合う味、メニュー、雰囲気の店がなかった。
(B)今まで常連として行ってた店と何かのトラブルで行けなくなった。
(C)今まで行っていた店に飽きた。
 ということが考えられます。
 (A)の場合を除いて、お客様は当店でないところでも常連客であったわけです。味の感じ方は個人個人違うも ので多種多様ですから全ての店で同じようなことが起こっているのです。そういう意味で(A)に該当するお客様は 店にとってとても嬉しい存在です。しかし、いつ(B)や(C)に変わるかもしれません。これらのことを踏まえて、「お 客様との接し方」 を考えていきましょう。

 全てのお客様は 「自分が無視されること」 を好みません。では、そのようなお客様の意識の中で、店側はそれ ぞれのお客様とどれほどの 「関わり合い」 を持てばお客様は満足するのでしょう。この 「関わり合い」 とは親密 度を指しています。そして 「親密度」 を加えたお客様に対する全体の対応度を分かりやすい言葉で表すなら 「接 客レベル」 です。
 さて、様々な性格、特徴を持ったそれぞれのお客様に対して、店側はどの程度の 「接客レベル」 を提供すれば よいのでしょうか。
 それは客単価によって決まります。ある店の客単価が
(D)八千円の場合 と
(E)八百円の場合 
で考えてみます。
 仮にその店の損益分岐点が八万円だとすると、(分かりやすくするために売上げが全て利益と仮定しますと) (D)の店では客数は十人で済み、(E)の店では百人も必要となります。そして 「十人の客数」 で済むということ は、「百人の客」 に接する場合より 「深い親密度」 が、即ち 「高い接客レベル」 が必要なことを意味します。反対 に、「百人の客数」 が必要な場合は 「十人の客数」 で済む場合の 「十分の一程度の親密度」 で終わらせなけれ ばならないことになります。
 もし、(E)の条件のお店でお客様から 「(D)と同じくらいの深い親密度を求められる」 なら、お店としては経営 的にやっていけなくなります。その場合は深い接客レベルを断るほか無いのです。
 反対に(D)の条件のお店でお客様から 「(E)と同程度の浅い親密度しか提供しない」 ならお客様は納得しない でしょう。例えば、高級レストランでセルフサービスなどやったらもう二度とその店には行かないはずです。お客様 を選択する、客層を選択することはとても大事な経営の要素です。

 私の店は当然(E)の条件のお店でしたが、たまに深い親密度を求めてくるお客様がいました。そういうお客様 にはそれとなく深い親密度を提供できないことを伝えるようにしていました。そういうお客様は必ず話しかけてきま すので、笑顔で返事はしますが、こちらから 「話しかける」 ことはしないようにしました。そのように接するならば、 だいたいのお客様には分かってもらえるようです。
 私は「深い親密度」を求める方を “常連客 ”、そうではなく定期的に来てくれる方を “固定客” と呼び方を変え ていました。よく見かけるのは(E)の条件の店で、常連客がいる状況です。この状態に陥っている店は売上げが 頭打ちであるのは間違いありません。いかにして 「固定客を増やす」 かが勝負です。そのためには、やはりコツ コツと真面目にやるしかないのではないでしょうか。

 先程、私の店において 「深い親密度を提供できないこと」 をお客様にだいたい分かってもらえる、と書きまし た。実は、これは 「来店しなくなる」 ということも含んでいます。(E)の条件の場合に 「なぜ深い親密度を持っては いけないか」 といいますと、一人のお客様と 「親しく接する」 ということは、その時に他のお客様を差別しているこ とになるからです。言い換えるなら、他のお客様を 「無視している」 ことになるのです。
 仮に、深い親密度を提供するなら 「お客様全員に対して」 でなければなりません。しかし、それは現実的に不 可能ですし、経営的に成り立たないのです。お客様に対しては 「平等でなければならない」 というのが私のポリシ ーです。
 又、「深い親密度を提供すること」 の弊害として次のようなことも起こります。
 私の知人の店でのことですが、あるお客様と親しくなりとても親密な仲となりました。そしてある時に借金を申し 込まれたのです。やはり、相手はお客様であるわけで無下に断ることが出来ず悩んでいました。お客様と店側は どんなに親しくなっても、そこには相手がお客様である分店側には弱い部分があるのです。弱い立場なのです。 友人を作るならあくまでフィフティフィフティでなければ真の友人とはなりません。あくまで、お客様とは一線を画し ていなければならないのです。

 ある夜、中年の男性が来店しビールと餃子を注文しました。餃子はどうしても時間がかかるのですが、三分程 過ぎた頃にその男性が 「餃子が出てくるまでにお通しかツマミになるものを出すのが客へのサービスだろう」 と 言いました。私は 「当店はラーメン屋なのでそういうサービスはやっていないこと」 を告げました。そのお客様は シブシブ納得したようですが、不愉快そうな表情を隠しませんでした。私はラーメン店を営業しているのですが、 お客様はそんなことはお構いなしです。店を構えるということは、不特定のお客様が入ってくることを意味していま す。この男性の場合は、ラーメンを食べることよりもアルコールを飲むことが主体になっています。ラーメン店の 場合、特にこの傾向が強いのです。あるお店ではビールの本数を制限しているところもありました。お客様がドア を入ってから座り、注文するまでにそのお客様が何の目的で、何を主体に考えているのかを予想することが大事 です。それを見誤るとトラブルに発展する可能性があります。
 これまで来店したお客様が 「どのようなお客様かを予想し判断する」 ことの重要性を書きましたが、お客様とい うのは 「そのときの店の状況」 によって変わることがあります。
 それは、店内が混んでいる時と、ガラガラの状況の時ではお客様は違います。要するにこれは、主導権をお客 様側が取るか店側が取るかの問題です。混んでる場合、お客様はその混雑さに圧倒されて主導権は店側にあり ます。お客様の側の人数にもよりますが、複数人でなければ必ず店側が主導権を握ることが出来るので安心で す。
 問題はガラガラの状態の時です。まず、ガラガラの状態の時に入店したお客様は店を 「舐めて」 きます。そし て 「食べてやるか」 という気持ちで優位に立て、主導権はお客様の側に取られます。その時に、先に述べたよう なことがらがとても大事になってくるのです。時には、入店を拒否しなければいけないこともあります。お客様が店 を選べるのと同じように店側もお客様を選ぶべきです。それを全てのお客様に満足を与えようとするのは土台無 理なことです。お客様は個人個人の自分の欲求を求めてきます。それを全てこなそうとするなら、店のアピール するものがなくなってしまいます。八方美人は衰退する以外にないのです。客層を絞ることが大切です。

  「世界で一番わがままな者は、それは消費者である」

<店の雰囲気>

 お客様を選ぶことの重要性について述べましたが、かといって来店してくださるお客様に 「店側の求めている客 層」 を毎回毎回説明するわけにもいきません。そこで、店が考えるべきことは、お客様に 「店が対象としている 客層」 を感じて貰うようにすることです。
 そのためには店舗の外装、内装、レイアウトなど 「店舗の作り」、そしてメニュー、価格、店主または従業員の 服装、言葉使い、態度などで示すことが必要です。こうすることによって 「店にとって」、または 「お客様にとって」 もミスマッチな来店は少なくなります。
 それでは、お客様に 「店の雰囲気」 を感じてもらう要因についてそれぞれ考えていきます。
 最初にお客様に 「店が対象としている客層」 をアピールするのは店の外観です。これによってお客様は 「高級 な店」 か 「庶民的な店」 かなど店のグレードを判断します。例えば、豪華な外観で厳かな感じがする入口の店に は間違ってもジャージー姿の人は入店しないでしょう。もし、そうした服装の人が入ってきたなら、よほど無神経な 人か危ない人です。どちらにしても店側で入店をお断りするのが正しい対応です。
 次にメニューと価格表です。メニューと価格表は必ず店の外にも出しておかなければなりません。先ほどの例と 同様に、一品の価格が7,000円もするメニューが表示されている店には間違ってもジャージー姿の人は入店しま せん。
 この2つの要因だけでも客層はかなり絞り込まれます。さらに、店内に入り内装やレイアウトなどを見てお客様 は 「店の客層」 を感じます。店が対象にしたい 「客層」 は 「男性か女性か?」 「高年齢者か若者か?」 「個人か 団体か?」 「金持ちか一般人か?」 などと、また 「子ども連れ」 「カップル」 でも入りやすいか?などとお客様は 感じます。
 こうしたことからわかりますように、お客様は外観や内装など「店舗の作り」が醸し出す雰囲気で 「自分に合って いるか」 を判断します。「店舗の作り」 はとても重要です。ですから、店舗の工事に入る前には必ず 「店の客層」 とするべく 「層」 を決めていなければなりません。単に自分の感性や好みだけで「店舗の作り」を決めることは決 してあってはならないのです。
 「店の作り」 はとても大事ですが、それに勝るとも劣らないほど重要なのが、店のソフト面といえる店主や従業 員の 「言葉遣い」 や 「立ち振る舞い」 です。このソフト面でもお客様は 「客層」 を感じます。例えば、庶民的な 「店の作り」 にしている店で店主や従業員が過度に丁寧でかしこまった態度で接客するなら、お客様は 「庶民的 な店」 とは感じないでしょう。反対に、高級店の場合にあまりに馴れ馴れしい接客をするなら、やはりお客様は 「高級店」 とは感じないでしょう。
 飲食店にはいろいろな形態の店がありますが、店内で食べる(イートイン)店の場合は持ち帰り(テイクアウト)の 店と違い、店内に滞在する時間がある程度あります。お客様は、その時間を飲食することだけに費やしているの ではなく店の雰囲気を感じることにも費やしています。ですから、イートイン店の場合はテイクアウト店に比べてお 客様により細やかに神経を配らなければなりません。そこがイートイン店の難しさでもあります。仮に三十分滞在 するとして、その三十分の間に 「たった一回ミスをしただけ」 としてもお客様はそれが 「店の雰囲気」 全てとして 感じてしまうこともあります。
 店の雰囲気は店主が作り出しますが、稀に思い違いをしている個人営業の店があります。それは、店主が自 分の子どもを店内で遊ばせたり、店内の椅子に座らせたりしている店です。
 一般的に、個人営業の店は高級店ではなく庶民的な店を目指しています。庶民的な店ですから 「くつろいだ」 雰囲気はお客様に好印象を与えます。しかし、決して間違ってはならないのは、お客様は店主の家を訪問をした のではない、ことです。あくまでお客様はお金を払ってサービスを受けに来ているということです。店内に家庭の 匂いがしてはいけないのです。その店のアピールしていることが “家庭的な店” であってもです。

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 人間は一人一人性格も考え方も人生観も違います。その全てに合わせることは不可能です。営業などで外回り をしている方たちも同じだと思います。営業などの場合は接客と異なり、お客様にある程度合わせなければ仕事 になりません。飲食店の場合は一日に百人以上の方たちと出会います。そうであるからこそ店主自身に合うお客 様をターゲットにすればよいのです。

第7回  肝銘

≪ 店の雰囲気は店主の人生観そのものだ。≫

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