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脱サラをする前に*リンクフリー 全頁無断転載禁止 

脱サラをしてラーメン店を始めたい人に役に立つ講座

第6回

どんぶり勘定は損をする。

<経営者と店長>

 前回も述べましたが、個人で商売するのと企業とは全く違うということを認識していなければなりません。企業な らば、経営者が店長という人材を雇い現場を任せるということが出来ます。しかし、商売いわゆる生業という言葉 がふさわしいと思いますが、生業の場合は経営者と店長両方の仕事を行わればなりません。このどちらも欠かす わけにはいかないのです。
 経営者の仕事としてはまず、資金操りの計画、税金、社会保険等、社会や地域とお店との関係です。店長の仕 事としては、従業員の採用と教育、経費の管理、調理、清掃等お客様に直接携わる仕事です。経営者と店長の 境界線は、確実に決まっているものではありませんが、どちらにしても生業の場合は個人事業主が両方をやらな ければなりません。これが、意外とどの仕事も時間が掛かるのです。仕事の割り振りとバランスを効率よくやらな ければ対処できなくなります。こういった意味からも、時間は自分の自由にならず、仕事に追われるだけで一日 が終わってしまいます。
 また、これらの仕事は全て初体験です。ということは、自己研鑽、自己啓発を怠ってはいけないことになります。 勉強しなければならないのです。私も店を始めてみて感じたのですが、本当に「自分が何も知らない」ということを 嫌というほど思い知らされました。
 そして社会や地域の中で店を営業するということは、様々な法律に縛られているということも知りました。「知ら なかった」 といっても言い訳にならないのです。「無知の罪」 とでも言いましょうか? そうしたことを防ぐために も、そしてもっと重要な売上げを確保し利益を上げるためにも、勉強はいつもいつもしていなければなりません。
 脱サラして最も感じることが、サラリーマン時代は何だかんだと言っても会社に守られていたということです。税 金一つ取ってみても、サラリーマン時代は自分の税金がどのように計算されて額が出てくるかさえ知りませんでし た。会社が全てやってくれるからです。脱サラをしたなら、それらのことも全て自分でやらねばなりません。税金を 納めるために時間と費用を自分で出さなければならないのです。厳しいものです。
 先程、「利益を上げるために勉強しなければならない」 と言いましたが、それにはどうしても財務分析知識も少 なからず必要です。さて、あなたは次の用語の意味をどれだけ解りますか?

P/L表  B/S表  粗利益   営業利益  労働分配率  FLコスト 

 最低限でもこれらの意味は知っておきましょう。

 正直言いまして私は店を始めるまで知りませんでした。そのためとても損をしました。必死に働いてるばかりで 無駄な努力と言っても良かったと思います。これは勉強不足のせいでした。これらのことを知って始めるのと知ら ないのとでは大きな差があったと思います。皆さんは始める前に勉強しておくことを薦めます。
 こういうこともありました。
 私のあとに始めた方ですが、この方は「らーめんの味には自信がある。」と言うのです。その方はらーめんが大 好物でいろいろなラーメン屋の食べ歩きをし、どこにも負けない味を作れる、というのです。確かに、その方の作 ったラーメンはとてもおいしかったのです。…二年後に廃業しました。
 ラーメン屋は味だけではないのだと思いました。様々な要素が重なり合って売り上げ、利益は確保できるので す。
 様々な要素が重なり合って利益は確保できるのですが、経費という項目の中で、私が最も大きいと感じたのは 「家賃」という経費です。例えば、不動産を持っていて家賃が掛からない場合は失敗する確率はとても小さいでし ょう。経費の中で一番大きいのが家賃なのです。
 ラーメン屋は、余程の悪いやり方をしない限りある程度の売上げを確保できるものです。只、売上げがあるか らといって利益が出るとは限りません。そこそこのお客様が入っているのに閉める店というのは、この経費で利 益が出なくなっているのです。脱サラをしてラーメン屋を始めようとする人は、だいたいの場合不動産などを持っ ているケースはありません。ですから細かいところまで目配りをして経営を行わなければ必ず潰れます。自分の 土地と建物を持って、先祖代々続けているような店とは条件が全く違うのです。そのためにはやはり店長の仕 事、つまり現場の仕事を一生懸命やることでしょう。因みに家賃は売り上げの十%が目安です。

  『利益は未来への投資コストである』

P/L表 = ある一定期間の企業の儲けを示すもので、営業損益、経常損益、純損益の三つがあります。
B/S表 = ある期末における企業の財務状態。保有資産や資金調達の方法などを示したものです。
粗利益 = 売上高から売上原価を差し引いたもの。
営業利益 = 企業の基本的な営業活動による利益で、売上高から売上原価と販売・一般管理費を引きます。
労働分配率 = 粗利高に対する人件費の割合。
FLコスト = Food(原材料費)とLabor(人件費)を足したもの。

<住民からの苦情>

  お店を開業・営業するにあたって注意しなければならないのは、近隣の住民への配慮です。私の店舗は8階建 てマンションの1階にありました。
 開業に向けて店舗の工事を始めて数日後に苦情がきました。5階の住民から 「工事の音がうるさく、振動が激 しい」 とクレームを言ってきました。その為、工事がストップしてしまいました。上階の人にとっては新しく店ができ ようが全く関係のないことで騒音や車の出入りは迷惑なだけです。早速謝りに行きましたが、この苦情は私が工 事を始める前に挨拶に行かなかったことが原因であったように思います。
 その当時は、そのような近隣に対する気遣いが欠けていました。私は内装工事が完成し、オープン前日に一階 にある他の店舗だけに挨拶に行きました。これは、順序が逆で工事の前に行かなければなりませんでした。しか も、一階だけでなく上階の住民に対しても個別でなくとも何か配慮をしなければいけなかったのでしょう。住民の 方々は、将来のお客様になる可能性もあるのですから…。このミスが後々まで響くのです。
 三年を過ぎた頃、住民の一人の方が来訪し「店の看板の色が派手でみっともなく、マンションに合わないから色 を変えて欲しい」と言ってきました。これには仰天しました。飲食店の看板の色は食欲をそそる色として黄色か赤 とするのが基本なのです。街中で見かける飲食店の看板を注意して見て下さい。だいたいがそうなっているはず です。これは単に派手な色が目立つということではないのです。この住民の方は、新しくマンションの管理組合の 会長に就任した方でした。
 さて、そう言われても「はい、そうですか」と受けるわけにもいきません。「なにかよい方法はないか」 と考えてい ましたが、簡単に妙案が浮かぶはずもありません。
 すると今度は、「飲食店はマンション住民に迷惑だから出ていって欲しい」 と言われてしまいました。その強引な 物言いには驚きましたが、この要求も当然受けるわけにはいきません。私は店を営業して生活していくわけです から生活ができなくなってしまいます。
 この時は本当に不安に襲われました。「どのように対応してよいのかわからず」、本部や知人に相談してみまし たが良い解決策は見当たりませんでした。この方はマンション管理組合の会長に就任する以前から一階店舗か ら 「飲食店をなくしたい」 と考えていたようです。これも最初の挨拶の欠除が響いてるのかもしれません。
 会長は定期的に来訪し、立ち退きを迫ってきました。私はほかの店舗の方や同業者などに話を聞いたりいろい ろと情報を集めたりしていましたが、そうこうしているうちに、どういう訳か何も言ってこなくなりました。その後しば らくして、管理組合と店舗、双方に対して中立的な考えの住民の方が間に入り、会長ではない管理組合の役員の 方が訪れ、現況のままで営業できることになったのです。あのときは本当に嬉しかったです。
 あとからの噂によりますと、その会長は他の住民の方ともトラブルがあり、それが原因で会長を辞めたようでし た。それにしてもその時に間に立ってくれた方には本当に感謝しています。私にとっては命の恩人に思えました。
 この経験から 「地域における飲食店の難しさ」 を学びました。飲食店はどうしても臭いが出ますし、お客様の出 入りによる騒音や車の駐車、自転車の駐輪など近隣住民の方々を不愉快にさせる要素をたくさん持っているの です。
 今回は一部の住民のようでしたが、その後、マンション規約の変更により当店のあとは飲食店が入居できなく なりました。こうした流れから考えますと、やはり飲食店に対する迷惑感は一部の住民だけではなく一般的な感 覚であろうと思われます。
 先日も、新聞に飲食店と住民の方のトラブルの相談が載ってました。たぶんこうしたトラブルは多いのでしょう。 近隣に配慮をしてしすぎるということはありません。このような自分の経験から私は思ったのですが、飲食店は住 宅街に出さない方がよいでしょう。住民にも迷惑ですし、店にとっても営業のやり方がどうしても狭まってしまいま す。仮に、当店が超繁盛して行列などできたら近隣の人に対する迷惑ははかり知れないものになります。幸い(?) そういうことはありませんでしたが…。

<問屋さん>

 私がオープンした時の問屋さんは製麺業者さん、食材・資材業者さん、卸肉業者さんなど全て本部から紹介さ れた業者でした。ある日のこと、その内の一社、食材の業者さんから朝十一時頃に電話がありました。その声は いつも配送に来てくれている人のものです。開口一番 「会社が倒産した。」 と言うのです。そして、「今日から配 送ができない、自分は一軒一軒、取引先に電話して謝っている」 と言うのです。業者さんは簡単に言いました が、当店にとっては一大事です。なにしろ食材が配達されないことには店も営業できません。私は急いでほかの 業者を探すことにしました。
 電話帳で調べますと、食材業者はいくつも載ってはいるのですが、多すぎてどれにしてよいか迷います。そこ で、いつも注文している製麺業者さんに紹介して貰うことにしました。全く知らない業者に電話をして探すよりは、 やはり製麺業者さんに紹介して貰った方が「間違いがない」と考えたのです。製麺業者さんは快く紹介してくれま した。
 このようにしてすぐに新しい食材業者さんを決めたのですが、翌日以降幾つかの食材業者さんから 「取引を希 望する」 電話がかかってきました。あまりに電話が多いので尋ねたところ、倒産した業者の 「取引先リスト」 を入 手して営業活動をしている、とのことでした。このような情報はすぐに広がるようです。
 当日の午後、すぐに新しい業者の方が来て説明してくれたのですが、嬉しいことに食材価格が前の業者よりも 平均的に安いのです。それまで、私は漠然と 「問屋さんは安いもの」 と考えていたのですが、同じ商品の価格が 業者によりかなりばらつきがあることを知りました。それをきっかけに全ての食材の価格を比較してみますと、中 には倍ほどもする商品がありました。
 前の業者の時はそこの一社だけでしたので他と比較するという発想がありませんでした。それどころか、その 業者に払う金額が高いことを自負さえしていました。その業者の担当者が集金に来たとき、「社長の店はいつも 支払い金額が一番か二番です」 などと私をおだてていたからです。単細胞な私は 「もっと支払う金額を多くしよ う」 とばかり考えていて 「価格が高いか安いか」 など考えてもいなっかたのです。私はとてもバカでした。
 その体験をきっかけに問屋さんに対する考え方を改めました。複数の問屋さんと取引して価格を比べること、を 基本にしました。具体的には、それまで一社に二十万支払っていた取引額を、二社に分けてそれぞれ十万ずつく らいの支払いになるようにしました。その後は、さらに分けて三社にしていましたが、問題点も感じていました。
 それは、各業者との取引額が余りに少ないと 「無理なお願いをしづらい」 ということです。例えば、どうしても急 に一個だけ欲しい物がある時など取引額が少ないと無理に配送して貰えないものです。やはり、業者にしてみま すと取引額が小さい店より取引額が大きい店を大事にするのは当然です。そうしたことさえ注意しているなら単 独の業者一社と取引をするより、複数の業者と取引をした方がメリットが大きいといえます。
 それにしても、問屋さんとの取引について見直すことにしたのは、取り引きをしている問屋さんが倒産したことが きっかけです。もしそうしたことがなかったなら、単細胞な私のことですから、いつまでもいい気になって一社に多 くの金額を払って満足していたかもしれません。その業者には申し訳ありませんが、私にとってはラッキーできご とでした。
 これまで話してきました問屋さんは地元の業者ではありません。しかし、米や野菜などは地元の販売店から買 っていました。価格的には安くないのですが地元の情報を得ることができるからです。この地元の情報を得ること は、店が地域で営業することにおいてとても重要です。例えば運動会やお祭り、新しくできる店、又は近くの企業 が縮小するなど売り上げに直接関係する情報を得ることができるのです。

<妻と家族について>

 お店は一人ではできません。パートさんやアルバイトさんを雇用することもあるでしょうが基本は妻です。人件費 という出費を考えるときパートさん等を多く雇用するわけにはいきません。言葉は悪いですが妻は “無料(ただ)” です。パートさんたちは休むこともありますが妻はありません。一番あてにできるのです。やはり生業は妻無くして はできません。
 しかし、妻は妻であって完璧な仕事のパートナーではないということも認識していなければなりません。妻は仕 事を一緒にやるために結婚したのではないのです。妻を愛していたから結婚したのです(ハハハ…)。
 言い換えるなら、「妻=有能な従業員」 とは限らないのです。それでも一番頼りにできるのは妻しかいないので す。その妻を最も効率的に使うには、妻の能力を見極め、長所短所を見据え、気分よく働いてもらうのが大事で す。それでも妻であるが故につい、きつい言葉も言ってしまいます。他の人には我慢して言わないことも言ってし まいます。二十四時間一緒にいるわけですから喧嘩も絶えません。それでも上手くやらなければいけないのが脱 サラなのです。夫婦の不仲が原因で店を閉めるという例もたくさんあります。脱サラで一番大事なことは 「夫婦仲 の良さ」 と言っても過言ではないかもしれません。
 いつ頃のことか記憶が定かではありませんが、ある日、「友人同士でラーメン店を始めようと思っているんです が…」 と相談に来られた方がいました。夫婦であっても中々上手くコミュニケーションがとれないものです。それ が全くの他人同士というときは成功する確率はとっても低いものになります。特に、利益の配分はいざという時に トラブルの原因になります。よくコンビニエンスストアで経営者募集というのがありますが、その条件に{夫婦であ ること}とあるのはこういう理由であろうと思われます。
 私がお店を始めた頃、子供たちは三才と四才でした。夫婦でお店に朝から晩までいるわけですから 「子供たち の世話」 というのも大きな問題でした。保育園に預けてはいたのですが、日曜、祭日、夜間、病気になった時など が困りました。その時に助けてもらったのが私の両親です。時間の都合をつけて子供たちをみてもらえたので す。もし、両親が子供たちの面倒をみてくれなかったらお店を続けていくのは不可能だったでしょう。又、親戚にも 手伝ってもらったこともあります。子供たちにも寂しい思いをさせてきました。友だちの家族が 「一家揃ってお出 かけ」 するのをいつも羨ましそうに話していました。
 こうしたことを考え合わせますと、脱サラというのは本当に家族、親戚、周りの人たちみんなの力を借りてやっと 一軒のお店ができるのです。お店は決して一人の力ではできません。応援してくれた周りの人たち全員に感謝の 気持ちをいつも持っていなければなりません。

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 マンション住民からクレームを言われた時は本当に精神的にこたえました。そのトラブルの期間、イタズラ電話 がかかってきたり新聞を盗まれたりなどいろいろなことが起こりました。しかし、対応のしようがないのが現実でし た。ただ、ただ、耐えるしかなかったのです。

<第6回> 肝銘

≪ 営業店は地域社会の一員である。≫

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