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ラーメン店を手っ取り早く開業する講座

第4章

◇◇◇ 問屋さんを選定します ◇◇◇

<問屋 開店に向けて>

 ここまで来たら開店に向けて準備の半分が終了したといってもよいでしょう。店舗探しは上手くいけば一週間で 決まることもありますし、何ヶ月も決まらないこともあります。店舗が決まった後は時間との勝負です。すでに家賃 を支払い始めているのですから出来るだけ早く営業を始めなければいけません。
 店舗の契約が済んだあとすぐに製麺業者・肉問屋・食品問屋を決めます。この時点で自分はどんなラーメン店 にするかを決定していなければなりません。例えば<札幌ラーメン>なのか、<鹿児島ラーメン>なのか、<博 多ラーメン>なのか、などです。最初に決めなければならないのは製麺業者です。インターネットや電話帳などを 利用して調べ、「ラーメン店を開業するので話を聞かせて欲しい」旨を事前に連絡し直接尋ねるのです。この時必 ず夫婦二人で行って下さい。
 夫婦二人で行くのは理由があります。たった一人で訪問するよりも相手側が丁寧に接してくれるからです。相手 側に対して、夫婦で取り組む姿勢で好印象を与えることもありますし、真剣味が伝わります。全体的に見て信用 力が増します。
 そのときに、どういった種類のラーメンを中心に売るラーメン店かを伝え、麺を決定します。もちろん、その時点 では自分なりに勉強していなければいけません。
 一口にラーメンと言っても使われている麺は多種多様です。太さだけを見ても細い麺から太い麺まで、それから 真すぐな麺から縮れている麺、または横に幅広い平たい麺など形状だけに限っても種類はたくさんあります。さら に麺の材料である小麦粉を変えたり小麦粉に加えるかん水や卵など材料を変えることにより歯触りの異なったい ろいろな麺ができます。それらの中から製麺業者の方に実物を見せて貰い、教えて貰いながら自分の麺を決め ればよいのです。
 ここで1つ、注意しなければいけないことがあります。先ほど書きましたように、自分で「麺について」勉強してい なければいけませんが、どんなに勉強していようが、「麺の専門業者」にはかないません。間違っても「知ったか ぶり」はしないことです。どんなに知識を蓄えていようが、謙虚さを失ってはいけません。そして、そのような姿勢 のほうが業者の方は親切丁寧に協力を惜しまないものです。
 話を戻しますと、麺の選定が決まった後、同時にラーメンのスープも勧められるはずです。だいたいにおいて製 麺業者は<ラーメンスープ>も扱っているのが普通です。ここでいう<ラーメンスープ>とは<ラーメンタレ>の ことです。一般的に<ラーメンスープ>というと、どんぶりに麺と一緒に入っているスープを連想しますが、業界で は<タレ>のことを指します。普通は<タレ>に豚骨や鳥ガラなどを煮込んだベースとなる<スープ>を足してラ ーメン用スープを作ります。これらの作り方はあとで述べます。私はおいしいラーメンの決め手は<タレ>と考え ています。もちろん他にも大切な要因はありますが最も重要視されるべきは<タレ>です。自分の舌(味覚)を信 じて<タレ>を決めて下さい。

 冒頭に書きました三つの業者の内、最も慎重に選択しなければならないのは製麺業者です。開業後にいろい ろなアドバイスを受けることができます。製麺業者にとっても取引先が増えることは業者自身の売上げが少なくと も数十万円は増加することですから歓迎するはずです。ですから訪問した際の説明の仕方や態度が「どのくらい 親切で丁寧であるか」によって業者の経営姿勢を判断しましょう。もし納得のできない業者であったなら「考えさせ て下さい」と言って帰ってくればよいのです。そのくらいの姿勢で製麺業者を選んで下さい。
 製麺業者と肉問屋・食品問屋との最も大きな違いは「調達の困難さ」にあります。具体的に言うなら、肉問屋さ んや食品問屋さんから仕入れている品物は代替が容易です。ほとんどの品物は近場のスーパーなどで類似品を 調達することができます。それに比べ、製麺業者さんから仕入れている麺やタレは近場のスーパーなどで調達す ることはできません。
 同じ理由で、最初に決めた<麺>と<タレ>はその業者特有のものであるため、容易に途中で業者を変更で きるものではありません。ですから三つの業者の中で食品問屋と肉問屋は開業後に変更することは問題ありま せんが、製麺業者だけは難しいものがあります。そういった理由から製麺業者は慎重に選定しましょう

 製麺業者が決定したならばその業者から食品問屋・肉卸屋さんを紹介して貰うとよいでしょう。製麺業者の選定 さえ間違えなければ悪質でない各問屋を紹介してくれるはずです。それに、どうせこちらは素人なのですからその ほうが手っ取り早いのは間違いありません。
 食品問屋さんには箸や鍋から醤油・メンマまでほとんど揃っています。必要なものはその都度配送してくれます が、その他に問屋さんが集まった市場も利用すべきです。こういった市場は各地域に一つは必ずありますのです ぐ調べられます。やはり日々使うものは特定の問屋さんに配送して貰いそれ以外のものは市場に足を運んで自 分の目で確かめて買ったほうがよいでしょう。そのほうが価格が安いこともありますし勉強にもなります。そうしな がら自店に合った優良な問屋さんを探していけばよいのです。
 尚、先程製麺業者で<タレ>を決めると書きましたが食品問屋でも<タレ>は販売しています。こちらはいわ ゆる有名な食品メーカーが業務用に出しているものです。メーカー・種類とも数え切れないほどたくさんあります のでそちらも参考にしてください。
 また、ラーメンのスープにコクを出すためにラードをベーススープに使いますがこのラードも食品問屋に売って います。因みに麺を扱っている食品問屋もあるのですが価格や発注してから配送されるまでの日数の問題など を考えると製麺業者に頼んだ方が得です。

 次に肉問屋について書きます。切り落とし(コマ肉)やチャーシュー用ブロックなどを買うのですが、その他に一 般の人にはあまり馴染みのないものとして鳥ガラとゲンコツ(豚骨)があります。これらはベーススープを作るとき に使用します。ゲンコツとは豚の大腿骨のことを言い、他の部位より骨髄が多いのでスープにコクを出す効果が あります。また、鳥ガラはゲンコツと一緒に使うとスープのうまみが増すと言われています。チャーシューは普通 は豚モモ肉を使います。これは約1㎏に分けて届けて貰った方がこちらの手間が省けます。できたら1㎏毎にネ ットを捲いて貰うかタコ糸で縛って貰うとよいのですが業者によってはその分仕入れ値を高くすることもあるので 確認しましょう。

 以上、三大業者について書いてきましたが最後にこれらの業者の配送日、支払方法を確認します。標準的な 配送回数として製麺業者は週5回、肉・食品問屋は週3回です。支払方法は月末締めの翌月10日頃です。ラー メン店は現金商売ですから毎日お金が入ってきます。それで支払いは翌月払いですのでこんなに有利なことはな いのです。このことも「手っ取り早く開業」できる理由でもあるのです。但し毎日貯まる現金は全てが儲けではなく 支払いの分も入っていることを忘れないでください。本来は当然のことですが慣れてくると気が弛んでしまい毎日 の現金収入をあてにしてついつい自転車操業になりやすいのです。現金の収支・残高を常に意識していましょ う。どんぶり勘定は破綻の第一歩です。

<メニュー>

 メニューを作る時の注意点を書きます。 
 基本はメニューの数を絞り込むことです。お客様からメニュー以外の要望があったとしてもできるだけ増やさな いことです。メニューの数は少なければ少ないほど利益を出すことが出来ます。それは絞り込むことによって食 材的・時間的・作業的ロスを防ぐことが出来るからです。
 例えばメニュー1種類の時と10種類の時では仕入れるべき食材が少なくとも5倍は違いますし、それにより廃 棄する分量も10種類の方が多くなります。調理する行程においてもメニューの種類が多いほど行程が増え、そ の分時間もかかるということです。出来たら7種類以内に抑えた方が良いでしょう。そしてメニューを決める時に 加えて欲しいのが餃子です。餃子は客単価を上げることにつながりますし、何といっても利益率が高いのです。
 よく<店の差別化を計る>といいますが、ラーメン業界においては札幌らーめん、喜多方らーめん、博多らー めんなどほとんど出尽くしています。だからといって差別化ができないということでありません。あなたの店の味そ のものが差別化なのです。あなたの店はチェーン店ではないのですからあなたの店にしかない味なのです。そこ が差別化です。但し、あなたの店で札幌らーめんも作る、博多らーめんも作るということは間違いです。それでは 特徴がなくなります。特徴のない店は消え去るのみです。普通に考えると、何でも揃っている店の方がお客様に は喜ばれると思いがちですがそれは魅力のない店となってしまいます。メニューの種類は少ない方がよいのです がメニューの種類が少ないということは他の店のメニューと同じになる可能性もあるということです。いや、そうな らざるを得ないのです。その時、あなたの味で差別化を図るのです。ここで言う<味>とは一般的に言われてい る<味>ではありません。あなた及びあなたの店全体の雰囲気から醸し出される<味>です。
 そうは言いましても近辺のラーメン店にないメニューを一品だけ考えましょう。一品だけでよいのです。本で調べ ても良いですし、どこか遠方の地へ行き近辺ではあまり見かけないメニューを作りましょう。「手っ取り早い開業」 を目指しているだけにそれが自分自身の自信につながります。

 次はメニュー表の書き方についてです。メニュー表はどこの席からも見える位置に貼ります。そして字の大きさ は7cmが適当です。あまり小さいと見づらいですし大きいと表全体が大きくなりスペース的に貼りづらくなります。 字の大きさが7cmですと10坪程度の広さの店でどこの席から見ても丁度良く見える大きさですし、メニュー表全 体の大きさもスペースを取りすぎるということはありません。そしてメニュー表と共にポップも必要です。特に売り たいメニューや先程の自分で考えた商品などをポップでアピールすることも重要です。
 価格について簡単に述べます。何故簡単にかというと価格を決めるのはあなたの自由だからです。自由とは言 っても限度はあります。その限度とはお客様が納得するということです。このお客様の納得する価格を<値ごろ 感>と言います。その値ごろ感をお客様に感じていただくために近辺の飲食店の価格を調べておきます。そして 自分で決めて下さい。価格を自分で決めるということはある意味「独立の証」にもなり結構嬉しいものですよ。
 最後に、メニュー表には必ず開・閉店時間とオーダーストップの時間を明示します。これはお客様にお知らせす る意味と自分自身を律する意味があります。全てを自分の思い通りにできる「独立」したあとは、得てして「自由 気まま」になりやすく、ついつい開・閉店時間を守らなくもなります。自分を自分で管理するためにも開・閉店時間 をメニュー表に表記していることは必要です。

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<終了間際のトラブル>
 もうすぐ営業時間も終わりだ、という時はやはり心に隙があるのでしょう。トラブルが起きやすいのです。悪意が あるかないかは別にしてその時間帯を狙って来店するお客様もいます。この時間帯のトラブルの多くは営業時間 が終了しているのに注文をしようとして起きます。メニュー表に営業時間、オーダーストップ時間を明示するのは その自衛の意味もあるのです。
 オーダーストップ後に来店したお客様はときにはお断りしても問題は起きません。問題はオーダーストップ直前 に来店したお客様への対応です。こういう場合は注文を受ける際に「ラストオーダーになりますがよろしいでしょう か?」と声をかけることです。こうすることによって、例えばゆっくりビールを飲みながらそのあとにラーメンを食べ ようと考えている人であっても納得して頂けます。
 稀には注文を取り止めて帰るお客様もいるでしょうがそれはそれでよいのです。一番いけないのが中途半端な 対応です。売上げが欲しいあまり注文は受けるが「さっさと帰れ」というような対応になってはマイナスイメージを 与えるだけです。終了間際に来店されたお客様にはオーダーストップの時間であることを明確に伝えましょう。こ うすることによってこのトラブルは未然に防ぐことができます。

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<その他の補足>

 私が開店をしたときもやはり開店に向けて充分に準備をしたつもりでした。それでもいざ開店してみるとうっかり とした準備漏れがありました。なにぶん全くの素人でしたのでやらなければいけないことがたくさんあり、つい忘れ ていたのです。それらを含めて役に立つまたは忘れやすい準備を書きます。

・ズン胴は2つ必要です。当日用と翌日用です。
・炊飯器は同じものを2つ用意します。とても混んだときに助かります。
・トイレットペーパーのストック。
・開店時に応援にきて貰える人の確保。期間は1週間と限定します。
・領収証と店のハンコ。一国一城の主になるのですから必要です。
・ビールを入れておくケース。これは近くの酒屋さんからビールを仕入れる交渉をするときにメーカーを紹介 してくれ、そのメーカーが無料で貸してくれます。
・開店時のことですが、開店3日間は宣伝の意味で価格を半額にします。但し メニューは3品に限定しま す。そうしないとパニックになり上手く捌けません。

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 お客様というのはいろいろなことを言います。例えば「~をメニューに加えたらもっと売上げが伸びるのに」など と言います。そうするとどんどんメニューの数が増えていきいつの間にか最初の頃の倍の数になっていたりします。お 客様はあくまでお客様の立場で考えているのであって店の経営者の立場から言っているのではありません。あな たは店の経営者として考えねばならず、お客様の意見をよく吟味し判断しなければならないのです。

第4章  肝銘(肝に銘じていること)

≪≪メニューの数は少なく!≫≫

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